■  静かな海洋  ■





 このミネルバに、俺の居場所はない。
 格納庫に行っても、休憩室に行っても、訓練室に行っても。
 輪に入れない。
 場違いな俺。
 声をかければ、敬礼を返され、早々に姿を消される。
 
 部屋に一人でいるのは退屈すぎて、館内をうろうろして、
 結局、また今日もここにいる。
 甲板には、めったに人も来ない。
 静かに動き、ゆっくり色を変える海を眺めていた。
 風が俺の髪を撫でていく。
 のびた前髪を押さえながら、その風に向かって呟いた。

「キラ…」

 また決別してしまった。
 こんなはずじゃなかったのに…。
 いつのまにか、前にすすむことも、戻ることもできなくなっている。
 キラはこんな俺を、軽蔑しているだろうな…。

「なんだぁ?こんなとこで」

 声がして、振り返った。
 太陽の光を受けた眩しい髪…ハイネだった。

「ヴェステンフルス隊長…」
「はいはい、それやめる。ハイネでいいって言わなかったか?」
「あ…すみません」
「ま、フェイスは俺の方が先任だけどさ。そんな気ぃ遣うなって。タメでいいよ」

 ハイネはそう言いながら、俺の隣に寄ってくる。

 眩しい人。
 その髪の色のように。
 一瞬でミネルバクルーの輪の中に入り、馴染んでしまった。
 シンも、ハイネには反抗的につっぱねたりしない。

 この人は、俺にはないものを持っている。
 それはカリスマ性か…魅力か。
 
「どうしたんだ?そんな暗い顔して。後ろから見たら泣いてるのかと思ったぜ?」

 さわやかに笑う。
 俺には、苦笑しかできない。

「いや…もともとこういう顔なんだ」
「へーぇ、そりゃすまなかったな」

 ハイネは、俺の傍から立ち去ろうとはせず、
 俺と同じように、その髪を風に遊ばせている。
 
 …俺の方が立ち去りたくなってしまう。
 会話もないまま、傍にいるような間柄じゃない。
 風に背を向けると、
 
「キラって?」

 ハイネが呟いた。
 
 弾かれたようにハイネを見上げる。

「聞いていたのか」
「聞こえたんだ」

 俺は視線をそらした。
 キラの名前は、鎖のように俺を締め付ける。

「…オーブに置いてきた恋人、とか?」

 体が大きく震えた。
 
「ありゃ、当たったかな」
「あなたって人は…」
「だから辛そうなんだなー」
「・・・・・」

 ハイネの手が、俺の肩に触れる。
 視線を上げると、ハイネが俺を見つめていた。
 優しい、笑顔で。
 
「ハイネ…?」
「泣いた方がすっきりするんじゃねーの?」
「そんなこと…」
「でもお前、今にも泣きそう」

 顔が近づいたかと思うと、

 静かに、唇を奪われていた。

「…!?な、何を…」
「なんかさ、たまんねーな」
「は…?」
「そんな顔してっとね…こう、ぎゅーっとしてやりたくなる」

 ふいに、抱きしめてくるハイネの体。
 その大きさに驚くと同時、

 何故か、
 頬に涙が流れたのを感じた。

 あぁ、そういえば…
 こんな風に抱きしめられることが、久しくなかった。
 キラと、離れて。
 
「耐えるなよ…痛々しい」

 俺の額に、ハイネの唇が触れる。

 涙が…止まらない。

 俺は、ハイネの胸元にすがって泣いた。
 ハイネの手が、俺の髪を優しく撫でる。

「アスラン…」

 その低い声が、
 俺の心に潤いを与えてくれた。





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ハイアス、初めて書きました。
DESTINYのアスランはかなり受けくさいので、かなり書きやすいです。
ミネルバで浮きまくりのアスラン。
そんなアスランが唯一甘えられる人が…ハイネならいいなぁvと。

SEEDではキラが儚い系だったのに、
DESTINYではアスランが儚い系になってしまいましたね。
かわりに、キラは強くなりました。さすがキラたん…v(ほろり)





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