■  一瞬の季節  ■





 朝の肌寒さにびっくりした。
 あぁ、もうそんな季節なんだ。
 ずっと暑い暑いと思っていたけど、寒さという不快もあるんだということを思い出す。
 もう半袖のパジャマじゃ風邪をひいてしまうかな。
 今日は買い物に行って、暖かそうなパジャマを見てこよう。
 
「あ、キラ起きたんだ?今日は随分お寝坊だね」

 寝室のドア開けて入ってきたアスランは、すっかり着替えていた。
 おまけにいい匂いがする。
 
「あっ!ごめん!朝ごはん…」
「いいよ、作っておいたから。顔洗っておいで?目やにがひどいよ?」

 僕は慌てて目を擦った。
 あーあ、アスランに笑われちゃった。



 オープンサンドとコーヒーが、食卓に並べられていた。
 
「ほんと…ごめんね、アスラン」

 申し訳なくて仕方ない。
 アスランはちゃんと仕事があって、僕なんか家の世話してるだけなのに。
 寝坊しちゃうなんて…。
 
「気にするなよ。今朝は寒かったしな」

 アスランは俯く僕の頬に触れる。
 見上げると、顔が近くて少し驚いた。
 
「あ…うん。だいぶ寒くなったよね」

 照れくさくて笑うと、アスランは小さなキスをくれた。
 
 アスラン…かっこいい…///
 どうしよう。大好きすぎて、大好きだ…///
 
「キラ?」

 ぽぉっとなってた僕を、アスランは可笑しそうに笑った。
 
「食べようか。ちゃんと作ったし、コーヒーが冷めないうちに」
「うん」



 美味しいブレイクファーストを食べてから、僕はアスランを見送った。
 今日は買い物に行かなくちゃ。
 着替えたら、まず朝ごはんの片付けして、チラシをチェックして、ついでに外で昼食も済ませて、帰ったら掃除して夕食作ろうっと。
 あ、洗濯もしないとなぁ。
 
「寒っ…」

 パジャマを脱ぐと、体が震えた。
 
「あ…そういえば」

 そうそう、この季節は。
 
「アスランの誕生日だ…」

 気づいたら、あと十数日でアスランの誕生日。
 今年は、何かプレゼントしたいな。
 結婚して初めてのアスランの誕生日だし。
 プレゼントは何がいいかな。
 アスランは何が一番喜ぶかな。
 きっと、アスランのことだから…「キラのくれるものなら何でも嬉しいよ」…とか言うんだろうな。
 
 愛されてるって、いいなぁ。
 こんなに心が暖かくなる。
 アスランは、僕の気持ちをわかってくれてるのかなぁ。
 愛してるって、わかってるかなぁ。
 
 うん、それだ。
 僕の気持ちが伝わるものにしよう。
 僕の大好きをいっぱい伝えられるようなもの。
 何か、ないかな。



 買い物に出ると、風は強かったけど日差しは暖かかった。
 部屋の中にいたから寒かっただけで、外はまだこんなに暖かい。
 心地いい季節。
 でも、この季節はすぐ消えてしまう。
 一瞬の季節。
 秋だなぁと感じた次の日には、もう冬だったりする。
 そんな一瞬。
 幸せな時ほど、早く流れるように。



 アスランに気持ちをあげよう。
 僕の大好きをあげよう。
 そして、愛されてるってわかってくれたらいいな。
 
「あ…これ、可愛い…」

 写真立て。
 あぁ、いいかもしれない。
 ここに、僕の気持ちを入れよう。





 アスランは今日何時に帰ってくるかな。
 帰ってきたら、ただいまのキスがあるから。
 それが楽しみで待っていられるんだよね。
 これって、やっぱり新婚だからかなぁ。
 年を重ねて、キスしてくれなくなったらどうしよう。
 僕、待っていられるかな。
 
「ただいまー」

 あ、帰ってきた!
 
「おかえり、アスラン」

 火を止めて、玄関に急ぐ。
 やっぱり、キスしてくれた。
 
「ん…アスラン、今日の晩御飯当ててみて?」
「え?」
「ヒントは、アスランの好きなもの」
「ロールキャベツ」
「あ…」
「当たった?匂いでもうわかってたんだけど」
「すぐ当てちゃうとつまんないな」
「今朝のお返し?」
「そこまで当てちゃうの!?もー」

 もう一度キスしてくれないと。
 なんて、思ってたらキスしてくれるし。
 なんでわかるの、この人!



 美味しそうにロールキャベツを食べてるアスランを見ながら、なんとなく思う。
 もしかして、今日僕が誕生日プレゼント買ったのもわかってたりして。
 いや、まさかそんなことはないと思うけど。
 だって、会話にも出してないしさ。
 うーん、でも隠し場所どうしよう。
 今はとりあえず冷蔵庫の底に隠してあるけど。
 今朝みたいにアスランが冷蔵庫開けちゃう時もあるしなぁ。
 でも、うち狭いし…そんな隠し場所ないよな…。
 
「キラ、何難しい顔してるんだ?」
「えっ…」

 びっくりした。
 
「なんでもないよ」
「そう?あ、ロールキャベツ美味しいよ」
「ほんと?よかった」

 大好きだよ、アスラン。
 
 もうすぐ、その気持ちを伝えてあげるからね。





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えー、キラたんの一日を追ってみました。
主婦も色々考えてるんですね。
続きはアスランの誕生日かな?(笑)





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