ジェネシス戦により、地球は壊滅的なダメージを受け、ザフト上層部も崩壊した。
同時に、ラクス・クライン率いる独立軍もその姿をくらませた。
時は、コズミックイラ71――
−そして始まる幸せな日々−
「おかえり!」
玄関まで出迎えると、彼は微笑んで答える。
「ただいま、キラ」
アスランとキラは、今日からこのコロニーの、このマンションで二人暮し。
引越し屋を送り出し、管理人さんやお隣さんにも挨拶をすませた。
戦争を休戦に追い込んだ役者だとは、誰も知らない。
「さぁ、今からが大変だよ。とりあえず、家具だけは取り付けたけど…」
ダンボールでふさがった廊下を大股で歩きながら、アスランが言う。
「そうだね。まぁ、でも僕にまかせてよ。早めに片付けるから」
キラはその後ろを同じように大股で歩く。
リビングにも多くのダンボール。
ベルトで縛られた家具。
真新しい壁紙の匂い。
今はまだごちゃごちゃとしているが、ここで二人の生活が始まる事に、自然と感慨が湧いてくる。
せまい中古マンションだが、エターナルの個室よりも暖かみがある…ような気がする。
「アスラン、いつからだっけ。明日から?」
キラは、アスランが出勤する日を尋ねた。
とりあえずアスランは、この近所で就職が決まっている。
キラも働くつもりだが、落ち着くまでは家の世話をするということになっていた。
「え…あぁ、明後日からだよ。だから、明日は一緒に片付けしようね」
「うん」
くぅ〜
「あ…///」
キラのおなかが鳴った。
アスランはくすっと優しく微笑み、
「晩御飯にしようか」
「そうだね…」
キラは恥ずかしそうに頷いた。
夜になって。
ベッドの上にマットとシーツを敷き終えたキラは、台所で晩御飯の後片付けをしているアスランのもとにやってきた。
「ベッドの用意、できたよ」
「ありがとう。こっちも終わった」
水を止め、手を拭く。
ふと、キラを見ると、なぜか俯いている。
「…どうかした?」
「え…///」
弾かれた様にアスランを見上げたキラの顔は、ほんのり赤くなっていた。
「なんでもない…!」
そして、逃げるようにバスルームの方へ行ってしまった。
アスランはしばらくきょとんとしていたが、すぐに察しがつき、微笑んだ。
「そうか…今日は初夜だもんな」
アスランがバスルームへ向うと、
キラは鏡を見つめ、真っ赤になっては俯き、何かぶつぶつ呟いていた。
「キーラv」
「わぁっ!」
後ろから抱きしめると、キラの身体がびくんと反応する。
「びっ…びっくりするじゃないか!」
「ごめん、ごめん。…何してたの?」
「なにも…///」
腕に抱かれながら、俯いている。
しかし、キラの考えている事が、アスランには手に取るようにわかった。
初夜を意識しているのは明らかで。
これからする事への期待、羞恥…そんなもので頭が沸騰しているのだろう。
「お風呂、入れてないから。シャワーでいいよね?」
普段の声で、アスランが尋ねる。
「え…うん」
「じゃ、入ろう?」
「うん…って、一緒に!?」
キラが顔を上げる。
鏡越しに、アスランは微笑む。
「いや?」
「だって…恥ずかしいよ…///」
「小さい頃はよく一緒に入っただろ」
「い、今と昔は違うじゃないか」
「・・・・・」
ふいに、アスランが無言になり、キラは焦った。
そして思い出す。アスランが昔に戻りたがっている事を。
昔のように、何のしこりも無く…過ごしたがっている事。
実際には、昔と同じようには戻れない。
憎んだ記憶、殺しあった記憶、どれも強く心に残っているから。
それでも、昔に戻ることを望むのは。
アスランが自分を愛しているからだと…
そうキラは、理解していた。
「…違わないよ」
アスランが呟く。
「違わないよ。今も昔も、いるのはキラと俺…だろ?」
言葉がすがるように聞こえ、キラは頷く。
「それとも…キラが変わった…?」
ゆっくりと首を横にふり、腕の中でアスランを振り返る。
正面からアスランを見つめ、
「変わってないよ…。僕は今だって、アスランのことを…」
その先は、心の中で伝える。
それでも、アスランには十分だった。
キラを抱く腕に力がこもる。
「シャワー…浴びようか」
アスランの囁きに、キラは静かに頷いた。
先にアスランが脱ぎ始めた。
それに気づいて、キラも服を脱ぐ。
下を向いて、極力アスランを見ないようにしているキラとは対照的に、
アスランは何とは言わずにキラを見つめていた。
細い体を、硬く薄い筋肉が覆っている…そんなキラの身体は、
骨格が華奢なせいだろうが、男性的でありながらどこか虚弱な印象を与える。
アスランの精を受け入れ続けて勘違いした腰が丸みを帯び始め、
消えかかったキスマークが、散り咲いている。
「・・・・・アスラン?」
視線に気づいたキラが、アスランを見上げた。
「あ…ごめん」
「…先に入ってるね」
服を脱ぐ手が止まっていたアスランを置いて、キラはバスルームに入った。
アスランも急いで全部脱ぎ、キラに続く。
「あんまり見ないでね…恥ずかしいから」
シャワーを出して湯加減をみていたキラが、ぼそっと言う。
「やっぱり、まだ恥ずかしい?」
「・・・・・」
「エターナルであんなにエッチしたのに」
「…言わないで。おねがい」
真っ赤になるキラ。
最中を想像したのか、身体を小さく震わせている。
「寒いの?」
そんなはずないのに、アスランはわざと股間を押し付けるように抱きしめた。
ぴくんと、キラ自身が反応する。
「や…っアスラン…!」
押し退けようと軽く抵抗するが、アスランは腕を解かない。
腰の横辺りに、アスラン自身が当たっている。
微かに熱をもって、硬くなっているのがわかる。
すると欲情が伝染するように、たちまちキラ自身も熱くなり始めた。
ひとりでに硬く上がってくる自身を見て、キラは恥ずかしさに死にそうになった。
「キラ…感じてるね…」
モノを擦り付けるように、妖しくアスランが動く。
「やだ、やめて…ここじゃしないっ…」
「今すぐしたい…」
「ひゃっ…あん……せっかくの初夜なのにぃ…」
「意識してたんだ?」
「ぁ…だって、ベッド作ったら…広くて…今夜ここで抱かれるのかなって…」
「ここは、いや?」
「いや…!ベッドがいい。ベッドで抱いて…っ」
いつの間にか向かい合わされて、くちゅくちゅと濡れたモノ同士を擦り合っていた。
先走りがぬるぬると混ざり合い、お互い快感に体温が上がる。
ざぁざぁと、シャワーヘッドからお湯が空しく流れていた。
「は…ぁ……だめ…イっちゃう…!」
「いいよ、イっても」
「やだやだっ…こんなとこで…」
「セックスはちゃんとベッドでしてあげるから…」
「ほんと…?ちゃんと…シてくれなきゃ、イヤ…だからねっ……あ…ぁん…も、ダメぇ…!」
崩れ落ちそうな身体をアスランに支えられ、キラは白濁の液体を放った。
「はぁ…はぁ……」
アスランに身体をあずけ、熱い吐息を整える。
「身体、きれいにしようか。ね…」
アスランの腹部に放った精液を示され、キラはせっかく出した熱を再び取り戻した。
「ごめんなさい…。一人でイっちゃった…」
「いいよ」
「でも…アスラン、大丈夫?」
「うん。我慢くらいできるから」
「・・・・・。どうせ僕は、我慢できないよ…」
「拗ねるなよ」
くすくすと笑うアスランが、意地悪に見えて仕方がない。
どうしてこんな人を好きになったんだろうと。こういう時はいつも自分が不思議になる。
しかし、理屈や理由が存在するはずがなかった。
ただ、アスランが好きで…愛しくて。
キラのそんな思いは、アスランとすれ違う中で大きくなっていたらしく、
今となっては、意地悪なアスランすら、愛しいと思うようになってしまった。
「キラ…?」
「アスランなんて…」
「…ごめんね」
「すぐ謝るし…」
「・・・・・」
「この家で初めてイく時は…アスランと一緒が良かったな…」
「あ…そこまで考えてなかった」
アスランは基本的に鈍感だ。
その辺本人も自覚しているが、キラの気持ちはわかっているつもりだった。
ただ、再会してからというもの…どうもキラの思考が乙女で。
どうやらアスランは、乙女心というものが理解できない性質らしかった。
「…もういいよ。さっさと身体洗おう?」
キラはアスランの腕からすり抜け、スポンジにボディーソープをつけ泡立てる。
ふんわりと、フローラルの香り。
決まり悪そうに、微笑むキラ。
それを見て、アスランもつられて微笑んだ。
こんな感じで、二人の生活は幕を開けた。
色々あったけれど、これからは幸せな暮らしが始まる。
二人とも、そう信じていた。
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第一章。
甘く甘く、ひたすら甘くが目標。(いつもと同じやないかい)
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