■ 君がいる夜 ■






 オーブを脱出して、アークエンジェルは緊張していた。
 カガリには、かける言葉も見つからなかったけれど。

 そんな時だったから、アスランとディアッカの居場所は微妙だった。
 とりあえず、二人で一つの部屋を与えられていたので、牢屋に閉じ込めるなんてことはなかったのだが。

「アスラン、開けて?」
 両手に料理のトレイを持っていたので、ドアを開けることができず、中に声をかけた。
 すぐにドアは横に開いて、アスランが現れる。
「ありがとう、キラ」
 トレイを一つ受け取り、アスランは僕を部屋の中へ招いた。
「ディアッカさんは…?」
 部屋にいたのはアスランだけだったので尋ねると、
「目当ての女の子が食堂にいるんだってさ」
 アスランは苦笑して答えた。
 たぶん、それはミリィのことだと思うけど。
 まわりはナチュラルばかりの、しかも元地球軍の中によく飛び込んでいけるなぁと思う。
 一緒に戦ったとはいえ、コーディネイターをよく思わない人はいるわけだし。
 今はまだ追悼ムードが漂っているから、なおさら居辛いと思うのだが。
「あ…じゃあ、これ戻してこないと」
 ディアッカさん用に持ってきたトレイを持って、部屋を出ようとすると。
「キラ、まだなんだろう?ここで食べたら?」
 そう言われた。
 にっこりと、笑顔つきで。
「うん…」
 断る理由はない。
 少し、恥ずかしかったけれど。

 硬いベッドに腰を下ろし、膝にトレイを乗せて食べる。
 行儀は悪いが、テーブルが無いのだから仕方がない。
「昔…さ」
 アスランが切り出した。
「昔、キラの部屋に遊びに行ったときは、ベッドの上でおかし食べるとよく怒られたよね」
 トレイに落としていた視線を上げると、アスランは隣で微笑んでいた。
 ゆっくりと、歩み寄ってくれているのがわかった。
 昔のように戻りたいのは、アスランも同じなんだと。そう、確信できた。
「そうだね。でも、ここにはテーブルもないし。母さんもいないしね」
 できるだけ、自然に笑った。
 もしかしたら、少しくらいわざとらしかったかもしれないけど。
 でも、アスランに伝えたかったから。
 僕も、昔のように戻りたいんだよ…って。

 幼馴染みなのに妙に緊張して、食事の味もよくわからない。
 ただ、話は色々した。
 昔のこと。学校での思い出。それから…
「…っ////」
 公園の話が出て、僕は一気に顔が熱くなった。
 小さい頃はただの遊び場だった近所の公園。
 でも、お互い大きくなってからは、セックスの場所に変わってしまった。
「どうした?」
 アスランが僕の顔を覗き込んでくる。
「喉に、つまった?」
 背中を優しく撫でてくれるが、僕は「違う」と首を振った。
 学校帰りに見る公園の夕焼けが綺麗だったね…という話で、セックスを思い出してしまう僕が変なんだと思う。
 でも、思い出してしまったのは仕方ない。
 それに、公園をセックスの場所にしたのは、アスランだったし。
「ただいまっと」
 そこに、ディアッカさんが帰ってきた。
 そして、一歩目で固まった。
「…なにしてるんだ?」
 アスランは困ったように、苦笑した。
「それが…俺にもさっぱり」

 トレイを食堂に戻している間に、頭はしっかりさめた。
 アスランを目の前にしていたら、ダメなんだと思う。
 毎晩、アスランを思い出して泣いていたから。
 そんな彼が、目の前にいると意識しただけで…恥ずかしくてたまらなくなる。
 別れる前は、身体の関係もあったし…。
「はぁ…」
「トリィ!」
 部屋に帰ると、トリィだけが僕を出迎えてくれる。
 アスランの身代わりだったトリィ。
 今は…なんなんだろう。
「アスランはいるけど、僕は君のこと、これからも大事にするからね?」
「トリィ?」
 手の甲に乗ると、彼は可愛く首をかしげた。

  コンコンッ
「はぁい」
 誰だろう。
 シャワーを浴びて、気持ちよく今から寝ようとしていたのに。
 そう思いながらドアを開けると、
「アスラン…?」
「やぁ」
 固まる僕の横をすりぬけて、アスランは部屋に入ってきた。
「ど、どうしたの?」
「うん?もう少し、キラと話したかったから」
 その微笑みに、なぜか恐怖を感じた。
 怖くないのに、どうしてだろう。
「トリィ…」
 眠りかけていたトリィも、アスランの気配に気づく。
「もしかして、寝てた?」
 アスランが申し訳なさそうに尋ねる。
 ベッドの乱れに気づいたのだろう。
「今、寝ようとしたところ」
「そうか…ごめん」
「いいよ。まだそんなに眠くないから」
 ドアを閉じ、アスランに振り返る。
 ふと、視界が暗くなったと思ったら、僕は…抱きしめられていた。
 びっくりして、何も反応できない。
 アスランも、何も言わない。
 ・・・・・。
 アスラン、大きくなったんだなぁ。
 僕より背が高いのは、なんとなくわかっていたけれど。
 こんなふうに抱きしめられると、体格の違いを感じる。
 彼も華奢なはずなのに、やっぱり僕の方が小さいみたいだ。
 そっと…背に手を回してみる。
「大きい、ね…」
「キラ…」
 切ないアスランの声。
 思いつめたように、聞こえる。
「なに?」
「キラ、まだ…覚えてる?」
「…なにを?」
「俺のこと」
「…? 覚えてるけど…」
 何を、言ってるんだろう。
 覚えてるのは当たり前じゃないか。
「俺との、エッチも覚えてる?」
「えっ…////」
 そっちか。
「夕食の時、キラが赤くなってただろう?その時は、理由がわからなかったんだけど。あれって、思い出したからだろ?」
「…言わないでね。恥ずかしいから」
「やっぱりそうか…」
 わかったなら、確認しなくてもいいと思う。
「キラ…あれから、誰ともしてない…?」
「そんなこと、聞かないでよ」
「したんだ?」
「・・・・・」
 答えられないよ。
 なんだか、アスランを裏切ったようで。
 別に、アスランとは恋人ってわけじゃなかった…と思うけど。
 それでも、アスランの気持ちは知っていたし。僕もアスランを…。
「まぁ、いいけどね…」
 アスランの声は、悲しそうだった。
 そういうアスランはどうなんだよって、聞きたかったけど。
 そこで「したよ」なんて言われたら、なんか泣いてしまいそうで…聞けなかった。
「あの…ちょっと、くるしい…」
「あ、ごめん」
 アスランの身体が離れていく。
 腕をちょっと緩めてくれるだけでよかったのに。
 もう少し…抱いていて欲しかったな。
「キラ…俺は、今でも…キラが好きだよ」
 見つめられて、告白された。
 きっと、それを言いに来たんだろうな。
「気持ちは昔より、強い。キラが愛しくてしかたないんだ」
「うん…」
 僕はうなずいた。
 気持ちは、同じだった。
 僕も…アスランが好き。
 言葉にできないほど、愛しい。ずっとずっと好き…。
「キラ、もう…」
 ぎゅっと、もう一度だきしめられ、そのままベッドに押し倒された。
「トリィ!」
 ベッドが跳ねて、トリィが驚いて飛び上がる。
 ゆっくり目を開けると、アスランが僕をじっと見つめていた。
 すごく…ドキドキする。
 こんな感覚、久しぶりだ。
「キラ…」
「アスラン…っ……」
 自分の声が、切なく聞こえる。
 鼻の奥が、つーんとする。
 涙が出そうだ。
「目、閉じて…」
 唇が、重なる。
「んっ…ぁ……」
 角度が変えられ、熱い舌が入り込んでくる。
 舌が口の中で触れ合うと同時、絡められて引き込まれた。
 甘く噛まれると、舌の裏がじーんとする。
 身体が反応して震える。
 あぁ…覚えていた通りだ。これが、アスランのキス…。
「キラ…ずっと、こうしたかった…」
 口付けの合間に、そう言われて。
 僕は涙を我慢できなかった。
 僕だって、ずっとこれを待ってた。
 アスランともう一度、こうして触れ合いたかった。
「泣かないで…」
 唇が離れて、ずぐ目元にキスされる。
「そんなこと、言ったって…!」
 涙が止まるはずない。
 いくら唇で拭われても、あとからあとから溢れてくる。
「泣き虫なとこも、変わってないね」
 クスっと、アスランが笑う。
「そうやって意地悪なこと言うアスランも、変わってないッ…」
「まだ、意地悪してないよ?」
「それって…どういう意味?」
「これからするって意味」
 なんとなくわかってたけどさ。
 だってもう、アスランの手が僕の服を脱がそうとしていたから。
「していい…よね?」
「ぁん!」
 服の下に手を入れて、乳首弄ってからそんなこと聞くなんて。
 やっぱり、意地悪なとこは全然変わってない。
「久しぶりだから…!」
「わかってる。優しくするよ」
 アスラン…わざと声を低くしてる。
 僕を、その気にさせようとしてるんだ。
「やッ…ん…」
 アスランの指が、僕の胸を触っている。
 それは、本物のアスランの指。
 ずっと想像してた、アスランの指と思い込む自分の指じゃない。
 本当に、今…アスランが…。
「アスランっ…もう…」
「なに?」
「ぁっ…やぁ…」
 もどかしい。
 指だけじゃやだ。
 僕…もっと色々想像してたんだよ?
 自分の指を舐めて、アスランの舌と思い込んで…
「キラ…食べたい…」
 上着は脱がされ、アスランの唇が胸に近付く。
 僕は自分から、胸を押し付けた。
 柔らかいアスランの唇が…僕の乳首に触れた。
 それだけで身体に電撃のような快感が走る。
「あぁんッ」
 声が抑えられない。
 もっと…って、言いたくてしかたない。
「美味しい…キラ…」
 ぺろぺろと舐められて、身体がじっとしていられない。
 腿に、堅い感触…。
 これって、もしかしてアスランの…?
「んっ…アスラン…堅くなってるぅ…///」
「気づいた?キラも…なってるよ…」
 服の上から、モノを撫でられる。
「いやぁっ…」
 知ってるよ。
 アスランとキスした時から、ずっとじんじんしてたんだから。
「直接触って欲しい?ねぇ…触りたいよ。キラ…」
「あッ…さわって…」
 恥ずかしいセリフ。
 わかってるけど、本当に触って欲しいから…。
 軽蔑されるかな。
「キラ、可愛い…」
「ん…!」
 アスランの熱い手が、僕の中心に触れる。
 僕はもう、恥ずかしさとかそういうものを忘れ去りたかった。
 ただ、アスランが欲しくて。
 与えられる愛撫を、素直に受け入れたくて。
「アスランっ…」
 ぎゅっと、抱きしめる。
「あ…もうっ…アスラン…!」
 伝えたい。
 この熱い体が欲しい。
 アスランが僕のものを擦るたびに、腕に力が入る。
「キラ…」
 色っぽいアスランの声。
 昔より、少し大人になった感じがするのは…この声。
「キラ、いく?それとも…」
 アスランの手がすべるように後ろへ回される。
 彼を、受け入れる場所へ。
「…いい?」
 誘いの言葉に、僕はうなずくしかできなかった。
 脚が、持ち上げられる。
 ひやりと、背筋に寒気が走る。
 あぁ…僕は怖がっているんだ。
 アスランの笑顔を見たとき一瞬感じた恐怖は、アスランを受け入れることを僕の身体が予感していたんだ。
 でも、身体は怖がっても…僕は怖くない。
 アスランが欲しい。
「あぁッ…!」
 ゆっくりと、先端が僕を開いていく。
 アスランの熱せられた楔が、僕の中に割り入ってくる。
「キラ、逃げないで…」
 逃げてなんかない。
 君が僕を手放そうとしてるんだ。
 もっと、しっかり抱いてよ。
「キラ…っ」
「ぁ…アスラン…!」
 埋め尽くされていく。
 僕とアスランが一つになる。
 吹き荒れる快感の中から、じわじわと幸せがにじみ出てくる。
「気持ちいい…?」
「うんッ…あ……もっ…」
 アスランにつかまって、必死に腰を動かして。
 僕はアスランだけを感じていた。
 ずっと、こうしていられたらいいのに…。
「アスラン…い…ぃっちゃ…!」
「うん…俺もいきそ…」
「きてッ…一緒に…っ」
 そしてアスランが僕の中で弾けた瞬間、僕も快感を飛ばしていた。

 宇宙はいつも暗い。
 電気を消せば、いつでも夜になる。
 目を覚ましても、明るくはない。
 それでも、君の顔ははっきり見える。
 ありがとう、アスラン。
 ずっと、ずっと…こうしていたいね…





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長くなってしまった…。
分ければよかったかなぁ。
 




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