■フェイズシフトダウンより■



「やめろ、キラ!」

 アスランの声。

「僕たちは、敵じゃない!」

 ヘッドスピーカーから聞こえる、アスランの声は…

 どこか切羽詰っていて、

 真剣で、

 僕を強く引きずり込むような、引力を感じた。



 ああ…

 このまま、

 アスランの元に飛び込んでいきたい。

 声に引かれて、このまま…

 そして、昔のように…



  ピッ

 その時、アークエンジェルが攻撃を受けていた。


「…!」

 あと少しで、アスランに引かれていた僕は、

 ウィンドウに現れた、アークエンジェルの被害状況にはっとした。


 あの艦には…サイたちが乗っている。


「キラ!」

 アスランが呼ぶ。

「ザフトに来い!」


 ザフト…

 そこは、アスランと一緒にいられる場所。

 アスランに…触れられる場所。

 だけど…

「キラっ…!」

 僕がザフトに行ってしまったら、

 サイはどうなるの?

 ミリアリアは?カズィは?トールは?

 フレイは、民間人だ。

 もちろん、サイ達も民間人だけど、今は艦で働いているんだ。

 地球連合の制服を着て…。

 ザフトは、どうする?サイ達をどうするの?

 捕らえた地球連合軍の少年たちを…どうするの?

 サイは、どうなってしまうの!?


「どうしたんだキラ!僕たちは、戦う必要なんか…!」




 昔…

 アスランが行ってしまって、

 戦争が始まって、

 メールも届かなくなってしまってから、

 僕は、寂しさに暮れていた。

 眠れない夜は、トリィを抱いて涙を流した。


 アスランの声が聞きたかった。

 アスランの笑顔が見たかった。

 アスランに触れたかった…!


 どんなに、過去のメールを見ただろう。

 でも、いくら見ても、僕の寂しさは癒されなかった。

 もう…寂しくて、悲しくて……

 死んでしまいそうだった。

 けれど、その悲しみから

 サイ達は、僕を救い出してくれた。

 コーディネイターの僕に、優しく笑ってくれた。

――友達だろ。

 そう言って…。

 僕を、死にそうな寂しさから、救ってくれたんだ。

 そんな彼らを…

 裏切ることなんてできない!

 見捨てることなんて、できない!


「キラ!」


 ごめん…アスラン。

 僕の我侭で、君の腕の中には行けないよ。

 僕には、大切な友達がいるんだ。

 好きだよ、アスラン。愛してる…



 でも!


「行かない!」




 行けない…




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第5話「フェイズシフトダウン」の、ワンシーンです。
キラとアスランがMS越しに言い合ってる時の、キラの心の中です。たぶん。




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