■さよならのポーズ■


「え、なっ…なんだよそれー!」
 キラは思いっきり不服の声をあげた。
「なんで、そんなことしなくちゃいけないんだよ!?」
「なんでって、キラが何でもいいって言ったんじゃないか」
「い、言ったけど!そんなのやだ」
「どうして?キラは僕が嫌い?」
「そうじゃないけど…」
「だったらいいだろ?キスぐらい」
 事の成り行きは…

「あれって、なんかいいよね」
 キラが、女の子たちを見て言った。
「なにが?」
 アスランも女の子たちの方を見る。
 女の子たちは、さよならを言いながら耳を軽く引っ張り合っていた。
「あぁ…なんか流行ってるね、あれ」
 アスランはそれを見て、キラが「いい」と言っていることが解った。
 最近、学内では、妙なことが流行っていた。さよならの時に、決まった動作をするのである。
 一部の女の子たちが始めたことらしいが、何故か学内の女の子中心に広まっていった。
 動作はともだち同士で決めて、それぞれほっぺたを軽くふにふにしたり、今みたいに耳を引っ張ったりして。
 おそらく、そうすることで仲間意識が強く感じられるのだろう。「私たち友達だよね」という意味なのかもしれない。
「うん。流行ってる」
「女の子たちって、変なこと好きだよね」
「え、変かな?」
「変じゃない?」
「いいと思うけどな。仲良しって感じで」
 キラはどうやら、あの“さよなら”が羨ましいようだ。
 自分も、仲のいい友達と、あんなふうに仲良ししたいのだろう。
 それを感じたアスランは提案した。
「じゃあ僕たちも、なにかする?」
「え、いいの?」
「うん。いいよ」
 あんな女の子みたいなこと、アスランは嫌がるに違いない…と思っていたキラは、予想外のアスランの返答に、笑顔を見せた。
「じゃあ、なににする?」
 キラは、なんだかワクワクしながら、アスランに尋ねた。
「え、あの耳引っ張るやつでいいじゃない」
「だめだよ、みんなと違うことしなきゃ。何か新しいこと」
「何かって?」
「え…と、うーん…」
 キラは大きく首をかしげた。
 しばらくそのまま、シンキングタイムは続く。
 その間に、アスランの頭には、ある考えが浮かんでいた。
「全然思いつかない」
 キラは肩をすくめる。
「じゃ、やっぱりやめる?」
 アスランが尋ねるが、キラは首を横に振った。
 どうしても、“さよなら”がしたいらしい。
 アスランはそのキラの様子に、心の中で笑った。
「あのね、キラ。僕、新しいこと思いついたんだけど…」
「え!?なになに?」
「ねぇ、キラ。何でもいい?」
「うん。何でもいいよ」
「じゃあ、僕が今から言うことで、決定していい?」
「うん。他に何も思いつかないし、それでいいよ」
 キラは早く聞きたいようで、簡単にOKした。
 アスランはもったいつける。
「本当に?」
「本当だよ!ねぇ、何を思いついたの?」
「じゃ、言うけどね」
 アスランはキラに耳打ちした。

「キス…しようよ」

「へ?」
 キラは目を丸くする。  聞こえたけれど、理解できるけれど、アスランがそんなことを言うとは思わなかった。
「なんて言ったの?」
「だから、キスしようよ。さよならの時」
「え、なっ…なんだよそれー!」
 キラは思いっきり不服の声をあげた。
「なんで、そんなことしなくちゃいけないんだよ!?」
「なんでって、キラが何でもいいって言ったんじゃないか」
「い、言ったけど!そんなのやだ」
「どうして?キラは僕が嫌い?」
「そうじゃないけど…」
「だったらいいだろ?キスぐらい」
 うっと、キラがつまる。
「僕が言うことで決定、て言ったよね?」
 アスランはさらに押す。
 それは事実なので。仕方なくキラは、うんと肯いた。
「だったら、そういうことで」
「で、でも!僕、キスなんか…!」
「ほっぺたにこうするだけだよ?ほら」

  ちゅ

「えっ…」
 アスランが離れた瞬間、キラは自分の右頬を押さえた。
「い、いまの、アスランの…?」
「ほら、なんでもないだろ?」
 なんでもなくなかった。
 アスランの唇が触れたところだけ、なにか熱くなったような気がした。
 しかし、アスランに「なんでもない」と言われて、自分だけどぎまぎするのは、何かかっこ悪くて、
「…うん」
 キラは肯いた。
「じゃ、キラも」
「え、僕も?」
「当たり前じゃないか。ほら、早く」
「う、うん…」
 キラはアスランを正面から見つめ、少し躊躇ったが、意を決したのか、ぎゅっと目をつぶり、アスランの頬にキスをする。
 …つもりだった。

「あ、あれ?」
 驚いたのは、アスランの方。
「き、キラ?どうして?」
 目をつぶっていたために、ずれてしまい…
 唇と唇が、半分重なったのだ。
 それに気づいたキラは、かぁっと顔を真っ赤にする。
「あ、あああ、ま、間違えた!」
「はい?」
「まちがえたんだよ!そ、そんなつもりじゃ…!」
 慌てふためくキラに、アスランはふっと笑って、

 キラの唇に、そっとキスした。
 とたんに、キラの動きが止まる。
「あ…」
「お返しだよ、キラ」

 バイバイ。さよなら。また明日ね。
 これからも、毎日交わす言葉。
 今日からは、そのたびに…

おわり


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 アスキラです。
 ショタの。
 幼き日のことってことで。
 アスランの一人称が、まだ僕の頃〜


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