■初体験■



 とんでもないことになってしまった。

「鷹介、俺と一緒に行こう」
「いや待て、俺と一緒に」
「え、じゃあ3人で行こうぜ♪遊園地」

 ひょんなことに。
 一甲と一蹴は、同じ日、同じ時、同じ場所で、鷹介をデートに誘ってしまった。
 それというのも。
 つい先日、霞兄弟がバイト中のところに、ビラ配りさんがやってきて、二人ともビラをもらったのだ。オープンしたばかりの、朝日遊園地のビラ。
 そのビラには、なんと入場無料券がキリトリで付いていて…
((これはチャンスだ!鷹介はにぎやかなところが好きそうだし、思い切ってデートに誘ってみよう!!))
 と、二人同時に決心していましたとさ。
 妙にテレパスしてる霞兄弟。

 鷹介はそんなことなど知るわけも、気づくわけもなく、
(なんか、これで一気に仲良しだよなぁ〜)
 と、にこにこしていた。
「兄者ッ、遊園地などくだらんと言っていたではないか!」
「一蹴こそ、こんなものは得なようで結局は損をするんだと言っていたじゃないか!」
「鷹介が一緒なら得になるんだ。兄者、ここは弟に譲れ!」
「ならん。たとえ兄弟の契りがあろうとも、これだけは譲れないな」
「契…ッ…は、恥ずかしいことを昼間っから言うな!」
「事実だろう。だいたい、俺の下で鳴くしか芸の無いやつに、鷹介をまかせられるか」
「あ、あれは!兄者が執拗に攻め立てるからだ!俺だってその気になれば、床くらいどうとでもなる」
「ほほう、言ったな。早漏のくせをして」
「だから昼間っから卑猥なことを言うなといってるんだ!」
「二人とも、なにコソコソ話してるんだ?」
 兄弟の小声の乱闘は、鷹介のきゃるんとした一言に終鐘が鳴った。

「わー!可愛い遊園地だなっ♪な、一蹴」
「う、うん。もちろんだ。俺が選んだんだからな」
 本当は偶然ビラをもらっただけ。
「おれさぁ、結構ジェットコースターとか、絶叫もの好きなんだ♪一甲、そういうの平気?」
「あ、あたりまえだろう。誰だと思ってる」
 本当は遊園地来たの初めて。
 そう。実は、あんな言い争いをしていた霞兄弟だが、遊園地なるアミューズメントパーク初体験だ。
 ただ、俗世界に来て得た知識の中に、「デートは遊園地」…とあっただけのこと。
 遊園地がどういうところなのかという認識はもっているが、実際、アトラクションのことなどは良く解っていない。
 しかし、
((そんなことがバレたら、もの凄く格好付かない!!))
 と二人とも心得ているので、なんとか一般人を装っていた。

「あ!あれ乗らないか?ガオズロックコースター」
 いきなり、朝日遊園地最大の目玉を指差す鷹介。
 その笑顔に、邪気などあるはずもない。
「そうだな。いこうか兄者」
(あ、あれが噂に聞くジェットコースターだな。け、結構高いじゃないか…)
「あぁ」
(あれが絶叫マシン…バイト仲間の話を総合すると、とにかくかなり爽快で壮絶で恐怖の連続らしいが…)
 列で待つこと30分。
「あ、次、おれたちだぜ。やっと乗れるな」
 鷹介は今か今かとコースターの到着を待っている。
 霞兄弟は、コースターの轟音に、少々引き気味。
 そして、いよいよ。
「鷹介の隣は俺だ」
「いや俺だ」
「じゃんけんすれば?」
 勝負の結果、一蹴がグーで鷹介の隣を勝ち取った。
「え?え?ど、どうなってるんだこれ、上がらないぞ」
「あ、一蹴、バーは持ち上がらないよ。これで体固定してるんだから」
「しかし、それでは降りる時に…」
「降りる時は外すに決まってるじゃないか」
「あ、そ…そうだよな」
 一蹴、冷や汗。
 後ろでは兄が不適に微笑んでいた。

  がこんがこん…(上昇中)
  がた…(一旦停止)
  ジャーーーーーーーーー(急降下!)
  ゴーーーーーーーーーーーーー(旋回!!)
  シャーーーーーーーーーーーーーーーー(最後の追い上げ!!!)
  がこんッ(ブレーキ)
  がたんがたんがたん…

「大丈夫か?」
 しかし以外にも。
 コースターでやられてしまったのは、伝説のカブトライジャーの一甲だった。
「ったく、苦手なら苦手って言えばよかったのに。いじっぱりだな」
 鷹介は一甲の背をさすりながら、文句を言った。
(か、格好悪い…)
 一甲は心で鳴きながら、振り返り、やさしい鷹介の手をぎゅっと握った。
「大丈夫だ。心配ない」
「ほ、ほんとに?」
「あぁ、次は大丈夫だ。この俺に、二度も同じ技は通用しない」
「わざって…」
「鷹介、もう一度あれに挑もう。今度は俺の隣で、俺の勇姿を見て欲しい」
「はぁ…」
 そこへ、一蹴は一甲と鷹介の間に割って入った。当然、手は離れる。
「一蹴?」
 その行動に、鷹介は不思議そうな顔をする。
 それでも何も答えない一蹴。
 そんな弟に、一甲は薄く笑った。
「嫉妬か?一蹴」
  ばちっ
 一瞬、一蹴の体から放電があった。
 動揺したときに、彼はよくこうなることを、兄はよ〜く知っている。
 さらに、自分の放電の理由を兄が知っていることも、一蹴はよ〜く解っている。
 とたんに気まずくなる雰囲気!
「なーんだ、嫉妬かぁ」
 と、そんな電撃な雰囲気を打ち破る、鷹介ののほほん。
 慌てる一蹴。
「ち、ちがう鷹介、これはッ…」
「大丈夫だって。誰もお兄さんを取ったりしないからさ」
「「は…?」」
 鷹介は鈍いかもしれない。

 もう、3時。
「はぁー、そろそろちょっと休憩しない?」
 と、鷹介の提案で、3人はパラソルテーブルに腰掛けた。
「そうだ、おれアイスでも買ってくる」
 売店へ行こうとする鷹介に、
「俺も行く」
「俺も行こう」
 一緒に立ち上がる霞兄弟。
 その息のぴったりさに、鷹介は思わずプッと笑った。
「いいって、二人の分も買ってくるから。そこで待ってろよ」
 そう言って、鷹介はぱたぱたと走っていった。
  がたん
 これまた同じタイミングで座りなおす霞兄弟。
「「はあ…」」
 さらに、同時にため息をつく。
「疲れるな、遊園地というのは」
「そうだな、兄者」
「鷹介はまったくもって元気だが」
「確かに…」
「あの元気はどこからくるのだろうな」
「まったく」
「眩しいくらいだ」
「惚気だな」
「人のことが言えた義理か」
「眩しいさ、鷹介は」
 しばしの沈黙。
「このまま、鷹介をつれて帰れたら…」
「どんなにいいだろう…」
 ・・・・・
「「いいかもしれないな」」
 おいおい。(汗

 夕方。
 ちらりほらりと家族連れの姿が消え、カップルたちが目立ってきた。
「そろそろ、帰ろらなきゃ」
 鷹介は名残惜しそうに観覧車を見つめ…
「なぁ、最後にあれ乗らないか?」
 その提案に、二人が反対するわけがなかった。

「うわぁ…キレイ…」
 鷹介は窓の外を見つめている。
 しかし、一甲と一蹴は、鷹介のそのきらきらした瞳に魅せられていた。
((ああ!このまま持って帰りたい!!))
 兄弟テレパス中。
「って、一甲も一蹴も…これじゃバランス悪いだろ」
 急に、鷹介は夕日から目を外し、二人にあきれたため息を送った。
「なにが?」
「バランスとは、なんのことだ?」
 解ってない兄弟に、鷹介はさらにため息をつく。
「3人ともこっちに座ってるから、ゴンドラ傾いてるんだよ!」
 解説しよう。
 鷹介の隣に座りたい一甲と一蹴は、それならばと鷹介の両隣に座ったのだ。よって、大人3人の体重が片側のみにかかり、すこぶるバランスが悪いのだ。
「だが、俺はここがいいんだ」
「俺もここがいい」
「あー解ったよ!おれが向こう行けばいいんだろ!」
「「そういう問題じゃない」」
 結局、最後までこのポジションでした。

「あー楽しかった♪」
 鷹介はご機嫌でゲートをくぐった。
 一甲&一蹴はその後ろを歩いている。
(今だ!今がチャンスだ!)
(鷹介を持って帰…)
「一甲と一蹴はどうだった?初めての遊園地」
 クルリと振り返った鷹介は、二人に爆弾を放った。
「い、いま…なんて…」
「だ・か・ら、初めての遊園地はどうだった?」
「き、気づいていたのか…」
「えー?すぐ解ったけど?」
 あいかわらず、鷹介はきゃるんとしている。
 霞兄弟の肩から、がくーっと力が抜けた。
「あ、もしかして隠してるつもりだったのか?」
 鈍感な鷹介でも、解ったらしい。
(なんてことだ…!)
(格好悪すぎるではないか…!)
  ぴぴぴっ
 その時、ハリケンジャイロが鳴った。
「はい」
『鷹介ぇ?晩御飯の手伝いしてくれるって言ったじゃなーい』
「あ!ごめん七海、忘れてた!」
『もぉー、いいかげんなんだから!もうできちゃったから早く帰っておいで』
「わかった。…あ、それじゃあ一甲一蹴、今日はありがとう♪また誘ってくれよな!じゃ」
 鷹介は風の様に去っていきましたとさ。



                                   おわり


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 いや〜
 好きに書きました♪(いつもだろう)
 ほんとに、好き勝手に♪
 私の書くゴウライジャーさまって、全然クールじゃないです…(汗














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