■ある日のこと。4■



   走が居なかった次の朝。
 あいつは、何も無かったような顔で、いつもと同じように朝食をとっていた。

 だが、何も無かったはずはない。
 昨日の夜中の2時頃、気になってもう一度走の部屋に行ったが、やはり走は居なかった。
 ‘朝帰り’
 何があったのかは解らないが、それだけは事実で、俺はすぐにでも走に問い質したかった。
 どこに行ってた…と。
 しかし、朝食を食べ終わったその直後、
  ばしゃしゃしゃ…
 泉が吹き上がった。
「この反応は!!」
 テトムが急いで泉を覗き込む。そして、
「臨海区にオルグが現れたわ!みんな、お願い」
 そう言われては、俺の使命感がめらめらと燃え上がり…
 走に聞くことがあるのを、ころっと忘れてしまっていた。



「まて!引き出しオルグ!!」
 俺たちは、オルグを波止場に追い詰めた。
「もう逃がさないぞ!ガオメインバスター」
「させるかヒキ〜」
 間抜けな語尾の引き出しオルグは、走のガオメインバスター目がけ、引き出し(らしきもの)を投げつけた。
「うわっ」
  がたんっ
 ガオメインバスターはコンクリートの上に落ち、走は右手を抑えてうずくまる。
「レッド!」
「大丈夫だ、ホワイト」
 走はすぐにガオメインバスターを拾い…と思ったら、ガオメインバスターが引き出しに吸い込まれ、引き出しオルグの中に入ってしまった。
「何っ?!」
「キッキッキッ、おれさまの引き出しは、なんでも吸い込むヒキ〜」
 ここにきて、引き出しオルグの能力発覚。
「くっ…これじゃうかつに近づけないぞ」
「どうするんだレッド」
 みんなの動きが固まってしまう。
「来ないならこっちからいくヒキ〜!くらえ、引き出し爆弾!!」
「「「「「うわぁー!!!」」」」」
 思いのほか強力な‘引き出し爆弾’に、俺たちはふっとばされ、情けなくも倒れてしまった。
「くっ…フェザーカッター!」
  きんっ
 俺が不自然な体制から投げたフェザーカッターも、あっさりとなぎ払われる。
「キッキッキッ、ガオレンジャーも終わりヒキ〜」
 その時!
「ガオハスラーロッド、スナイパーモード!!」
  ばしゅばしゅんっ
「ヒキ〜!!」
 絶妙なタイミングでやってきた光弾の直撃をくらい、引き出しオルグは豪快に吹き飛んだ。
「シルバー!」
 走が嬉しそうに名を呼ぶと、シルバーはクールに、
「待たせたな、レッド」
 名指し。
 いや、助けてくれたのはありがたいのだが、なんとなくコイツは気に入らない。
「いまだ、みんなの心をひとつに!」
 走の合図で、俺たちは破邪の爪を組み合わせる。
 その時、なぜかシルバーが走と一緒に破邪百獣剣を持つ。
 少し前から、このスタイルになっているのだが…何故!?
 …まぁ、戦いの時にそんな事を聞いてる暇もなく、ずるりずるりと、このスタイルが定番になってきてしまっているのだが。
「破邪百獣剣…はぁー!!」
「ヒキ〜!引き出しには防虫剤入れようね〜」
 引き出しオルグの最後の言葉は…よくわからなかった。



「シルバー」
 戦いが終わり、変身を解いた走は、一番にシルバーに駆け寄った。
「すまない、風を感じるのが遅れてしまって」
「いいんだよ、助けてくれてありがとう」
 と、とびきりの笑顔で言う走。それを見て、シルバーも微笑む。
 ちょっと、待てこら。俺の前で…
「レッド!帰るぞ!!」
 少し大声で言うと、走はびくっとして、すぐに俺の元へ走ってきた。
「うん。…あ、シルバー」
 しかし、走はシルバーに振り返り、
「また…ね」
 手をふった。
 それにシルバーも応え、片手を軽く振って去っていった。
 いいかげんにしろ…
「走っ」
「え!?あ、イエロー、名前…」
「いいから、こっちこい!」
「え、えぇ!?ガオズロックに帰るんじゃ…」
 頭にたくさんハテナを乗っけた走の手を引き、俺は人気のない波止場のすみへ大またで歩いた。
「あちゃー、イエロー機嫌わるー」
「情けないね、ヤキモチやいてんだぜ、アレ」
「どうしたものか…。自分達は先にかえろうか」
「そーだなっ」
「いこいこ」
 後ろで、そんな会話が聞こえた。


  ばんっ
 なにかの倉庫の陰に着き、俺は走を壁に押し付けた。
 びくっとする走。
「な…なに…怒ってんの?…岳」
 俺を恐れるような、子犬のような目をして、走は俺の様子を窺う。
「おまえな…どういうつもりだよ…」
 極力声を低くする。
 脅すつもりはない。ただ、聞きたかった。
 俺の、信じたくない疑惑を、否定してほしかったから。
「ど…どういうつもりって…」
「ま、おまえのことだから無意識なんだろうけどな。俺はそういうのが我慢できねーんだよ」
「……?」
 それでも走はまだ解っていない様子。
 走の純粋なところは好きだ。そこに惹かれたと言ってもいい。
 だが、こういう鈍感さにいらつくのも確かだ。
 遠まわしに言っても伝わらない。ここは単刀直入にきく。
「シルバーのこと、どう思ってる」
「えっ……!!」
 走の目が見開かれる。
「どうとも思ってない…ことはないだろ。解るんだよ。おまえのこと、いつも見てるからな」
 いつも見てる。
 その言葉を聞いたとき、走は悲しそうな目を一瞬見せ、そしてうつむいた。



「……ごめん」
 しばらくの沈黙の後、走は絞り出したようにこう言った。
 その言葉に、俺の中の何かがキレて、
「なんで謝るっ!!」
 とうとう、大声で走を責めてしまった。
 ひくっと肩が震え、おずおずと俺を窺う走の目は濡れていた。
 ちがう。俺は何をしてる!?
 走を責めてはいけない。
 いつか、いつだったか、誓ったはずだ。
 走が、他に何も考えられなくなるくらい、俺のことを好きにさせてみせる…と。
 だが、一度キレてしまうと、もう抑えられずに、
「俺に…俺に謝るような事があったのか!?シルバーと!」
 直接、コトがあったのか聞いているようなものだ。
「……ごめんっ…そんなつもりじゃ……なかった…」


 走のその言葉を聞いた瞬間、頭が真っ白になったような気がした。
 否定してほしかった。
 嘘をつかないおまえに、否定してほしかった。
 だが、走は…
 俺の疑惑を、肯定したようなもので。


 はやい秋の夕日が静かに沈んでいくのが、走の顔色でわかった。
 俺たちは、気まずい雰囲気の中、それでもお互いの視線を外せずにいた。
 どうする…
 このまま日が沈んで、夜という時が俺たちに訪れたら、何も言わず、走と一緒にガオズロックへ帰ろうか。
 そうして、そのまま。
 何も無かった様にすごせば、走の心は完全に…あいつのモノになってしまうのだろうか。
 ……そんなこと、許せるわけがない!



「走」
 もう暗くなり始めた頃、ようやく俺は口を開いた。
「岳…」
 それに応えるように、走も俺の名を呟く。
 涙の溜まった瞳。
 白くなった顔。
 震える身体。
 心。
 すべて…
「愛してるんだよ…」
 どうしようもなく。
 走を愛しているから。
「もう、いい。シルバーと何があったか、もう、どうだっていいから。俺のこと、走が愛してくれるまで…」
「おれだって!」
 叫んだ瞬間、走の涙がこぼれた。
 しかし、それを拭いもせず、
「愛してるよ!岳のこと、すっごく愛してるよ!シルバーと…その……てる時だって、岳のことっ…ずっと考えてたんだからっ…」
 ぼろぼろと、際限なく流れる涙と、走の独白は続く。
「シルバーに求められて、嫌だったわけじゃないけどっ、でも!岳に嫌われること、すごく怖かったっ…!何もなかったことにしたかった。けど…隠せるわけ無いよね、おれたち…何度も繋がったんだから。
 でも…おれは、シルバーとも…、繋がって…っ…強要されたわけでもなくて、シルバーに必要とされたとき、好きって言われたとき、素直に嬉しくて…
 おれが、悪いの…わかってるんだ。許してもらおうなんて、思ってなっ…」
 俺は、走を抱きしめた。
 ひくりと、走の涙は一瞬止まるが、それでもまた溢れ出す。
「ごめん…おれ、言ってること…めちゃくちゃ…」
「許してもらおうなんて思ってない?」
 きつく走を抱きしめながら、その耳元に囁く。
「それって、俺と別れてもいい…ってことか?」
「なっ…そんなわけ…っ」
「違う…よな」
「わかれたくないに決まってるっ」
 きゅっ…と、走は抱き返してきた。
 良かった。
 なんとか、なりそうだ。
 ただ、この身体を、あのヤローも抱いたのかと思うと、ハラワタ煮えくり返る思いだが。
 この際、それは静かに置いておいて。
 とりあえず、走との関係修復に、今は全力をそそいでやる。
「愛してる、走」
「おれも…愛してるのは、岳だけだから」
 また、「ごめん」と言いかけた走の唇は…ふさいだ。



 キスが、久しぶりな気がする。
 ついこの前、寝たばかりだというのに。
 歯列を舌でなぞり、角度を深くし、舌の裏を硬くした舌先で責める。
 てろっと、走から唾液が漏れ、顎に流れ落ちる。
「んっ…」
 苦しいのか、俺の肩をぐっと握りしめてくる。
 俺は少し唇を離し、
「走…」
 呟いて、また重ねた。
 舌の奥も、歯の裏もなめて、俺の唾液を注ぐと、走は耐え切れずにこくりと飲み下した。
 俺は薄く目を開け、赤くなっている走を確認し、そして舌を舌に絡め、きゅっと吸い上げる。
「んぅーっ……!」
 ふぅっと落ちそうになる走の腰を支え、俺は離れ際に下唇にちゅっと音をたてた。
「……はぅ…」
 俯き、息をつく走の顎を捉え、俺に向かせる。
「走」
「ん…?なに?」
「シルバーにも、そんな可愛い顔見せたのか…」
 落胆したように呟く俺に、走は目を見開いて、
「っ!!岳…ごめん、おれ、もう二度と岳を裏切ったりしないからっ…」
 必死に言う唇に、軽く触れ、その頭を抱きこんだ。
「当たり前だ。もう二度と、走を渡したりしない」
 耳元に、熱っぽく囁く。
 独占欲…か。
 俺にあるのはそればかりかもしれない。
 だからHの時、走に「わがまま」って、言われるんだろうな。
 ガキだ、俺は。
「岳…」
「ん?」
「あ…あのさ……」
 俺に抱かれながら、言いにくそうにしている。
「なんだ?」
「うん…その…」
 う〜…と唸る走。
 しかし、俺は気づいた。走の言わんとしていることに。
 存在を主張する、走のモノに。
「唇だけで、感じたか?」
「うっ…」
 一気に走は耳まで真っ赤になる。
 その様子に、思わず笑ってしまうと、走は怒って、
「笑うなよっ…!」
「はは…悪い。だが、それじゃ帰れねーな…」
「……………」
 無言になる。
 俺はすっと右手を伸ばし、走のベルトのバックルを外した。
 片手で外せるこの技術、練習したことは絶対に秘密だ。
「岳っ…」
「処理しねーとな。Hな走先生」
「だ、誰か来たら…!」
「来ない」
 断言する根拠はどこにもないが、実際、この夜の波止場には人の気配など無かった。
 するりとベルトを抜き去り、その辺に落とす。
  ちゃんっ…
 ベルトの金具とコンクリートがぶつかる音が、しんと冷えたような倉庫裏に響く。
 ジッパーを下ろし、ズボンをトランクスごと落とすと、ぴょんっと走がはねた。
「可愛い。もう濡らして…」
「…言わないで、岳…っ」
 きつく目を瞑る走。
 俺は走の元気なそこに触れ、手のひらで撫で回した。
 少々乱暴にされるくらいが、走は感じるようで、俺の背中に回された腕に力が込められる。
「走…、好きだ。おまえだけが」
 抗えない走の耳元に愛を囁きながら、俺は走の根元を人差し指と中指で突くように刺激してやる。
「あつぅ…っ!い…たいよ、がくぅ」
「いたいか?」
「はぁっ…、あ…」
 走の苦しんでいるような感じてる顔は、俺を煽ってますます愛撫を乱暴にさせる。
 ひくひくする背筋を支えていた手を、ゆっくり下へずらしながら、走をこすりあげるスピードを早くしていく。
 白い喉を見せ、反りかえる走は、俺にすがりつき、
「も、…イっちゃう……岳っ、あ…出ちゃうよぉ…っ」
 気持ち良さそうな声をあげる。
 限界を訴える走の唇に、そっとくちづけて宥めながら、俺の指は走を求めて侵入していった。
 中指の第二間接を呑みこんだ時、走が痛そうに顔をしかめた。
「きついか?」
「ひっ…と、とめないで……もう、ほんと、ヤバいからっ…」
 一緒にイきたい―と、暗に語る走。
 健気な恋人が可愛すぎて、俺の欲望もそろそろ、我慢が効かなくなってきた。
 人差し指も入れて、入口を広げるように動かす。
 走を虐めていた手で、走の片足を持ち上げると、柔らかい体は俺を受け入れやすい体制になった。
 俺はすばやく自分を取り出すと、俺を待つ走の入口にあてがった。
 挿入を覚悟した走は、両腕を俺の首に絡める。
 二本の指で蕾を強引に押し開き、俺の先端が走の中に入った。
「あっ…」
 俺の熱を感じるのか、そのとたんに走の甘い声があがる。
 両腕で走を抱きしめ、深く己を呑み込ませていく。
「はあぁ…」
 痛むのか、それを逃そうと低く息を吐き出す走。
 俺はかまわず腰をすすめ、しっかり入りきったところで、走に話し掛けた。
「走」
「っ…な、なに?」
「イく時に、走の気持ち…言ってくれるか?」
「なっ…!?」
「俺も言うから」
「そ、んなことっ…おれ……あぁっ!!」
 走の返事は待たずに、俺は一気に揺さぶりをかけた。
 走は何も意味ある言葉もだせず、ただただ嬌声をあげる。
「あっ…はっ…っ……ゃん…あぁ……っ…」
 粘液のこすれる音が、倉庫裏に目立った。
 腹の間と走の中で、お互い絶頂へと駆け上っていて、
「走っ…愛してるぜっ…!」
「あぅっ…おれもっ…ああぁぁっ!!」
 白い飛沫は、ほとんど同時に互いを汚していた。



                  もう、続くのか続かないのか…(汗)

Back/Next/Top



 もう、無計画に書きすぎな私。  最初は体位の話だったのになー(懐)  なんだか、泥沼だし。  もういいです、何でも。(あきらめ)  話完結してないんで、続くのかもしれませんが…私的にはもう満足です。ある日シリーズ。  しかも、今1〜4まで読み返してみましたが、話繋がってないし!!  やっぱり、長編(ってほどでもないんですが)はダメだな…ってことで。  ではっ!(逃)













SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送