微妙な女王様


キスが下手なんだよなぁ…
ま、オレだって上手じゃないけどさ。
オレより三年も長く生きてるんだからさー、もーちょっと大人でもいいと思うんだよね。
なのになーんにも知らなくてさ。
苦労するの、オレばっかりだよ!



「な、草太郎、キスの練習しようぜ」
「はいぃっ?!」
オレの言葉に、草太郎の声はひっくり返った。
「な、ななな、なんでいきなり…」
「だって草太郎のキス、ヘタクソなんだもん!」
少々ショックを受けてる様子の草太郎。
自覚なかったのかよ…
よし!こうなったら徹底的に自覚させてやる。
「なんか固いんだよ!草太郎、本当にオレのこと愛してるか?!」
「そ、それはもちろん…」
「んじゃあ、もっと気持ち入れろよ。草太郎のキスって、なんか作業的!キスって言うより、接吻ってかんじ!」
「同じでは…?」
「全然ちがうよ!カタカナと漢字じゃ!」
もぉー、どうしてわかんないかな。このバカ牛。
「で、でも自分は…海の前だと緊張して…」
「だから練習しようって言ってるんだよ。何回もやってたら、そのうち緊張しなくなる!」
「そうかな…」
「そうだよ!」
オレはじれったくなって、半ば強引に唇を奪ってやった。
三秒ほどで、離す。
目を開けると、草太郎は硬直していた。
「…ばか。草太郎、目ぇ開けてたな?」
「と、突然だったから…」
「言い訳するな!キスしてるときは目ぇ瞑れ!恥ずかしいだろ!」
「…はい」
やっと素直に返事したな。
下僕のくせに、遅いんだよ。
「じゃ、もぉ一回」
「ま、待って海、ここどこだかわかってる?」
「?…泉の前だろ?」
「いつ誰に見られてるかわからないよ?」
「はぁ?キスぐらい、みんなどこでもしてるじゃん」
気にしすぎなんだよ。
だいたい最近なんて、街中五分も歩いてたら、ぜったい誰かキスしてるの見るぞ。むかつくけど…
「いや、その『みんな』の基準がわからな…」
「うるさいっ」
オレは再度、唇をふさいだ。
薄目を開けると、今度はちゃんと草太郎も目を閉じている。
よしよし。それでこそ草太郎だよな。
さっきよりいくらか長めのキスをして、離れる。
「ぷはっ…よし、今度は草太郎からやれ」
「えっ…」
「いいから!ほらっ」
オレは親切にも、少し顔を上にあげて目を閉じた。
するとしばらくして、暖かい唇が重なってきた。
角度が大きい。
あ、舌入れてくれるのかな。
そんな期待に胸膨らませるけど、一向にその気配はなく…
はぁ…こいつに期待したオレがバカだったよな。
オレは草太郎のあごに手をかけ、口を少し開かせると、隙間から舌を押し入れた。
「んっ…」
草太郎がびっくりしてるけど、おかまいなし!
誘うように、草太郎の口内を弄る。
けど、なーんでオレがこんなことしてるわけ?
奉仕は草太郎の務めだろうが!
そう思って、オレは唇を離した。
草太郎の口から、舌がのぞく。名残惜しんでるのかな。
だとしたら進歩だけど、
「か、海…やっぱり、やめよう」
「なんでだよっ」
草太郎のその言葉に、オレの血は駆け上った。
「なんでいっつもそーなんだよ!やっぱり草太郎、オレの事愛してないんだ!そーなんだろっ?!」
オレが、このオレが、ここまで頑張ってるのにっ…
下僕失格だ!!
「ちがう。愛してる、大好きだよ海」
「うそだっ」
「うそじゃない」
「じゃあ、なんで『やめよう』なんて…」
すると、草太郎は少しためらって、でも、オレに言葉をくれた。
「これ以上やってると、海を…傷つけたくなる…」
それは、バカ牛の、ほんっとにバカな発言だった。



なんだよ…草太郎、大人なんじゃないか…
それで、オレのこと、子供扱いしてるじゃないか…
バカ。ほんとバカ。
オレは子供じゃないのにっ…
優しすぎるんだよ。ド真面目なんだよ。
…バカ。



「傷つけるのは許さないっ!」
オレは、精一杯意地張って、でも…
「でも、傷つけられるもんなら、傷つけてみろよ」
これでも、オレなりに誘ってるんだ。
「この甲斐性なし」
罵声は浴びせるけど。
傷つくのはいやだ。でも、草太郎になら、傷つけられてもいいのに…
ち、ちがうちがう!
やっぱり、下僕に傷つけられるなんて、絶対いやだ!
あぁ、もぉ、その辺微妙なんだって!
わかれってば、草太郎っ!



                              おしまい







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タイトル通り、海ぴょん(←ブルーのことね)の女王様ぶりが書きたくて、書いたやつです♪
ってゆーか、これはもう…ギャグ?いや、疑問形にするまでもなく、ギャグですね…
そうたろさん(←ブラックのことね)がヘタレすぎ…(爆)
 
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